菊地 秀行著 ソノラマ文庫

 あとがきによると、今回のDはずいぶん脱稿が遅れたようで、そのせいかどうかはわかりませんが、どことなく妙な雰囲気の一冊となっています。
 ここしばらくの傾向として、Dが以前に比べて饒舌になっているというのはありますが、さらに今回、意外な反応を見せています。まあこれは、新たに登場したマキューラ男爵のキャラクターの影響が大きいんでしょうが、それにしてもこのDの変化は、多少賛否が分かれるかもしれません。
 またストーリーの方も、このマキューラ男爵を中心としたどたばた劇といった感じで、かなりいつもとは趣が異なっているように感じました。
 とはいえこの珍妙な貴族様、ただのゲストキャラかと思いきや、D自身も知らない彼の秘密を知っているばかりか、あの神祖とも交流があり、なおかつ、現在の神祖の居場所にまで心当たりがあるらしいと、とんでもない大物ぶりを発揮し、さらにこの先も登場することをにおわせるラストとなっているなど、作者がいかにこのキャラを気に入っているかがよくわかります。
D‐血闘譜―吸血鬼ハンター〈16〉 (ソノラマ文庫)