9・11生死を分けた102分 崩壊する超高層ビル内部からの驚くべき証言"

9・11生死を分けた102分  崩壊する超高層ビル内部からの驚くべき証言9・11生死を分けた102分 崩壊する超高層ビル内部からの驚くべき証言
三川 基好

文藝春秋 2005-09-13
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 この本とは、確かブログで紹介されてたのを見て、あ、読もうと思ったわたしとしては少々珍しい出会いでした。
 この本は、あのテロ組織「アルカイダ」が旅客機を乗っ取り、アメリカのワールドトレードセンターの2棟のビルに突っ込ませるという前例のないテロ行為と、その後、2棟の摩天楼が崩壊するまでの102分間にいったい何があったのかを、関係者への取材や電話、通報の記録から再現しようとしています。
 作者が言いたいことは途中から読者にも非常に明確に示されます。あの事件で多くの方が命を落としたのですが、そのうち、少なくとも2機のジェット機がビルに突っ込んだあと、命があり、最終的にビルの倒壊等でなくなった方の多くが、ビルの構造的欠陥、およびニューヨーク市の消防と警察の連携不足(というか、対立)で命を落としたという、あまりにも悲しい現実を直視し、反省しなければならないというメッセージです。
 あの事件直後、アメリカそしてニューヨーク市当局は犠牲者を英雄のように取り扱い、わたしたちもその言葉を信じていました。でも実際にはそうではなかった(もちろん実際に英雄的行動をとった方々も多勢いましたが)。それらはある意味、美談で覆い隠されてあまり表には出てきませんでした。実際、この本は2005年に出ていますが、帯には「映画化決定」と書かれています。でも現実にはそういう話は聞こえてきません。そうでしょう、これはアメリカとしてはもちろん、ニューヨーク市も世界に向けて発信などしたくはないでしょう。
 ここに書かれていることを鵜呑みにするのは危険かもしれません。しかしWTCの2棟のタワーは建設当時、「旅客機が突っ込んできても倒れない」と宣伝されていたようですし、本によれば事件後の検証の結果、タワーに使われていた構造材が、規定の強度を持っていなかったことが確認されています。
 何事にも一つの面から見るだけではなく、多角的に見なければ真実は見えない。この本はそのことを再確認させてくれた気がします。