微睡みのセフィロト

微睡みのセフィロト (ハヤカワ文庫JA)
微睡みのセフィロト (ハヤカワ文庫JA)冲方 丁 獅子猿

早川書房 2010-03-05
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 冲方氏の本は小説の書き方は読んでいますが、小説はまだ読んだことなかったんですよね。「マルドゥック・スクランブル」とかタイトルは知ってましたが。ただアニメ「蒼穹のファフナー」は面白く見ていましたし(スタッフに氏が参加されているのは知っていました)、漫画でも「ピルグリム・イェーガー」はその独特な物語を興味深く見てましたが、この本の解説を読むまで、氏が原作だとは知りませんでした。
 ということではじめての冲方作品だったのですが、圧倒されたというのが正直な感想です。膨大な世界観を流れるように展開しつつ、軽妙に物語を紡いでいる。特徴あるキャラクターたちをきれいに描き出している。
 一方で、若干子供っぽい、設定に溺れる傾向もあるように感じました。造語がやや多すぎる気がするのです。この辺はSFの場合、さじ加減が非常に難しく、またレーベルなどによっても変わってくるので一概には言えないのですが、少しジュブナイル寄り過ぎる気がしました。
 でもこのイメージの奔放さはうらやましい限りです。冒頭に登場する混断(シュレッディング)だけとっても、描写からアイディアの塊で、読んでいてそれこそ圧倒されました。
 はじめて読むには手軽に読める分量ですし、なかなかお勧めの一冊です。