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天地明察

novel
天地明察(上) (角川文庫)
天地明察(上) (角川文庫) 冲方 丁

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天地明察(下) (角川文庫)
天地明察(下) (角川文庫) 冲方 丁

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 冲方さんのイメージっていうのは、この本(の元になったハードカバー)を見るまでは、バリバリのSFの人って感じだったので、書店で平積みされているのを見てずいぶん驚いた思いがあります。

 映画にまでなって、それでようやく文庫版を買ったのですが、読み出したのは年が明けてからでした。

 何より驚いたのは、主人公渋川春海の造形のすばらしさ。生き生きとしてまさにそこに晴海本人がいるかのようです。正直、これには度肝を抜かれました。おそらく、著者自身がこの渋川春海という人物に惚れ込んだ結果ではないでしょうか。ただその反動というか、主人公以外の人物の影がやや薄い気がします。まあ比較すれば、といった程度なので、物語的には問題ないのですが。

 物語は意外なほどゆっくりと進みます。いきなり改暦の話にはならずに、まず春海という人物を描き、時代背景などの状況を示し、そして北極出地で日本全国を測量して回り、そして何度も失敗を繰り返して、やっと改暦を成します。

 わたしがこの本を読んでいて印象に残ったのは、人が、ぽろりぽろりと死んでいく様でした。史実を元にしている以上、小説の進行とは何の関係もなく人が死ぬことは当然あるのですが、それがあまりに淡々と、それでいて非常に切なく書かれていることに何度も胸がいっぱいになりました。しかしその一方で死んでいった人々の志を受け継いだ若い人物が現れ、ああ、こうして人は前に進んでいくのかと思い知らされました。

 映画版はまた違った内容になってそうなので、そちらも見てみたくなりましたが、まずはおすすめの作品です。