屍者の帝国

屍者の帝国
屍者の帝国 伊藤 計劃 円城 塔

河出書房新社 2012-08-24
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 冒頭部分のみが伊藤計劃氏の筆で、続きを円城塔氏が引き継いだ形で書かれている本書ですが、読んだ感想としてはちょっと読みにくいかなあとは思いました。面白いことは面白いんですが、やや状況が説明的というか……リズムがよくない印象を持ちました。二人の違いという点は、伊藤氏が書いた部分が非常に短いため、それほど気にはなりません。

 話そのものはスチームパンクでハードSFとは少し毛色が違いますが、展開が興味深いのと、登場人物が様々な文学作品から借用されているので、そういったおもしろさは確実にあります。

 この本を読んでいていつも引っかかったのは、この完成形を、伊藤氏はどこまでわかっていたのだろうか、という点でした。言い換えれば、亡くなる前に伊藤氏と円城氏の間でどれほどのやりとりがあったのだろうか、概念やオチまで含めた部分にも納得がいってるのだろうかという疑問です。これがきれいにわかる機会というのはちょっとやそっとでは訪れないでしょうけど、やっぱりなんかこう、引っかかるものはあります。