優しい煉獄
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あの早川の「星界」シリーズで有名な森岡氏の短編(中篇？)集です。いちおう文法などはハードボイルドを踏襲しているようですが(あまりハードボイルドに詳しくないので・・・)、やはりそこは森岡氏。ただのハードボイルドではありません。
実に個性的な世界が舞台となっているんです。死者が暮らす世界、といってもあの世とかそういったものではなく(そう言っても間違いではないのでしょうが)、生前に保存しておいた個人のデータをサーバ上の仮想空間に再現した世界・・・って、わかります？(^^; ただ仮想空間といっても舞台となってるのは昭和60年代の日本をモチーフとした、どこか郷愁をさそう風景で、仮想空間ならではの事件が起こり、ここで探偵を営んでいる朽網康雄はそんな事件に、あるいは進んで、あるいは巻き込まれて関わっていく。
感想としては・・・おもしろいんですけどねえ。とりあえずハードボイルドとはちょっと言いにくい気はしますね。ハードボイルドがやりたいんなら、こんなに世界観に凝るべきではなかった気はしますし、この世界観を生かしたいのなら、もっと別の、ドラマチックなほうがよかった気がします。たとえば何かの間違いで「生者」である主人公がこの世界に放り出されてしまって、何とかもとの体に戻ろうとさまざまな努力をする、とか。
なんにせよ、もったいない気はしますね。きっといろいろ考えてらっしゃるんでしょうけど。
